リハビリの段階付けで差がつく訓練技法と失敗しない課題設定のコツ

query_builder 2025/05/06
コラム
著者:株式会社エルエーピー
06リハビリ 段階付け

リハビリの段階付けが分からず、なんとなくで訓練を進めていませんか?
「いまの動作が本当に効果的なのか」「患者に合わせた評価や課題設定ができているか」――そんな不安を抱えている作業療法士やご家族の方は少なくありません。実際、段階の設定ミスが自立支援を遠ざけることもあります。

 

リハビリテーションを段階的に構築している施設は、ADL(日常生活動作)の向上率において他と比較して明らかな成果を上げており、段階づけは回復に直結する重要な要素と位置づけられています。

 

本記事では、根拠に基づいた訓練手法を、現場での活用例を交えて詳しく解説します。
段階付けの意味と失敗しない設計方法、そしてリハビリ効果を最大化するための工夫が、きっとあなたの現場にも活かせるはずです。

 

片麻痺のリハビリをサポートするパワーアシストシリーズ - 株式会社エルエーピー

株式会社エルエーピーは、脳梗塞や事故などによる片麻痺の後遺症を持つ方々の自宅でのリハビリをサポートするため、パワーアシストシリーズを開発・提供しております。このシリーズは、空気圧を利用して麻痺した手指や足首、手首の関節をやさしく動かし、リハビリ訓練を補助するロボットです。自宅で簡単に使用でき、継続的なリハビリを可能にします。製品ラインナップには、手指用の「パワーアシストハンド」、足首用の「パワーアシストレッグ」、手首用の「パワーアシストリスト」があり、各部位のリハビリに対応しています。これらのリハビリ補助ロボットを通じて、皆様の機能回復と生活の質の向上に貢献いたします。

株式会社エルエーピー
株式会社エルエーピー
住所 〒243-0212神奈川県厚木市及川2-1-40
電話 046-204-9343



リハビリの「段階付け」とは何か?基礎用語と意味から理解する

段階付けの定義と意味を解説

 

医療・介護・リハビリテーションの現場で「段階付け」という言葉は頻繁に使われますが、一般的な意味と臨床現場での使われ方には大きな違いがあります。日常生活では「段階付け」は物事を順序立てて整理することを意味しますが、リハビリ領域では、患者の状態に応じた目標設定や訓練内容の調整、進捗の確認に不可欠な概念です。

 

段階付けとは、対象者の身体・精神・生活機能の状態に応じて、リハビリの評価・訓練・計画をフェーズごとに分け、無理なく目標達成に導くための実践的枠組みです。具体的には、以下のような要素が組み込まれています。

 

リハビリ領域での段階付けの基本構造

 

段階名 主な目的 評価の視点 主な訓練内容
急性期 安静と生命維持 バイタル安定、安静度 関節拘縮予防、座位保持練習
回復期 基本動作の再獲得 筋力・バランス評価 起立、歩行、移乗、食事訓練
維持・生活期 自立した生活の支援 ADL自立度、生活範囲 トイレ動作、掃除、買い物練習

 

このように、段階付けは単なる「並べ替え」や「優先順位付け」ではなく、訓練計画・支援方針・家族指導などあらゆる判断の土台になります。段階付けがあるからこそ、「今の状態でできること」「次に目指すべき機能」「そのために必要な訓練手法」が論理的に整理され、現場の判断や指導が一貫性を持つのです。

 

また、段階付けにはICF(国際生活機能分類)の視点も欠かせません。ICFでは「心身機能・構造」「活動」「参加」などの要素に分けて対象者を評価し、それぞれに合った介入を行う必要があります。段階付けはまさにこのICF的な視点に基づき、評価から実施までをシームレスにつなぐための“翻訳”でもあります。

 

さらに、段階付けは療法士だけでなく、介護職や家族とも情報を共有しやすくする役割も担っています。曖昧な「まだできない」「様子見」といった表現ではなく、「今は回復期の後半で立位保持が安定してきたので、次は移動訓練に入る」と具体的に共有することで、訓練の意義や必要性を誰もが理解しやすくなります。

 

不適切な段階付けが及ぼすリスク

 

リハビリにおける段階付けは正しく設計されれば患者にとって回復の羅針盤になりますが、逆に誤った段階付けは重大な問題を引き起こします。中でもよく見られるのが「過剰負荷」「達成困難な目標設定」「目標が曖昧で評価不能」といったケースです。

 

例えば、筋力や関節可動域が回復していない状態で無理に歩行訓練を行うと、転倒や痛みの再発を招くリスクがあります。また、ADLの能力が低い段階で家事や買い物の訓練に進むと、患者本人が挫折感を抱いたり、訓練意欲そのものを失うこともあります。

 

不適切な段階付けによる主なリスク

 

リスク内容 具体例 起こりやすい影響
負荷の過剰 バランス不安定な患者に階段昇降訓練を実施 転倒、疼痛、恐怖感
達成不能な目標設定 片麻痺の回復期初期に箸での食事訓練を強要 自信喪失、リハビリ意欲の低下
段階飛ばし 起立訓練をせずに歩行訓練へ移行 歩行不安定、再訓練の必要性
曖昧な段階目標 「生活ができるように」とだけ記載された訓練目標 評価困難、療法士間の引継ぎトラブル

 

さらに、段階設計のミスは療法士だけでなく、介護職や家族との連携ミスにもつながります。現場でありがちなのが、「介助方法が変わったのに共有されていない」「進行に合わせた環境整備ができていない」といった事例です。これは、段階が曖昧だと全体の支援の質が分散してしまうという典型的なケースです。

 

正確な段階設計があれば、例えば「食事は自助でOK、移動時のみ見守りが必要」「トイレ誘導は午前中のみ完全介助」など、支援者が役割を明確に理解でき、患者も混乱せずにリハビリに集中できます。

リハビリテーションの4つの段階と段階別の訓練内容を完全解説

リハビリの「急性期」に行うこと

 

リハビリテーションの初期段階にあたる「急性期」は、病気や外傷の発症直後、主に入院中に対応する医療フェーズです。対象となるのは脳卒中や脊髄損傷、外傷性骨折、術後直後の患者などで、生命維持と合併症予防が最優先される期間です。この時期の訓練や介入は、早期離床による合併症の回避と、できるだけ早く次のステージへと進めるための土台作りという役割を担います。

 

急性期では「関節拘縮」「筋萎縮」「誤嚥性肺炎」「深部静脈血栓症」「褥瘡」などのリスクが高く、単に安静にしていることが安全とは限りません。医師の指示を受け、リスク管理を徹底しながら、最小限でも身体を動かす支援が求められます。

 

具体的な訓練内容と目的は以下の通りです。

 

目的 実施される主な訓練・支援内容
関節可動域の維持 他動的な関節運動(ROM運動)、ベッド上での自動運動指導
筋力低下・廃用症候群の予防 アイソメトリック収縮訓練、座位保持訓練
呼吸機能の改善 呼吸リハ(深呼吸、咳嗽訓練、口すぼめ呼吸)
早期離床の促進 端座位訓練、立ち上がり練習、ベッドからの移乗練習
意識・認知レベルの評価と刺激 覚醒レベルの観察、刺激入力、反応性訓練

 

訓練時間は一般的に1日20分から30分程度の短時間介入が中心ですが、これは医学的安全を最優先した結果です。訓練量は増やすよりも「定期的な評価と体調管理」が重要とされ、状態に応じて訓練内容を柔軟に変更する姿勢が求められます。

 

また、急性期では本人の理解力が低下していることも多いため、家族や看護師など多職種との連携が不可欠です。たとえば、訓練後にポジショニングを正しく行うこと、関節を支えるクッション配置など、生活環境の調整も訓練効果を高める重要な要素です。

 

「回復期」で重視される訓練とは

 

回復期は、生命的な危険を脱し、機能回復を本格的に進めるフェーズです。脳血管疾患であれば、発症からおおよそ1か月以内、整形外科的疾患であれば術後10日〜2週間を目安に開始されます。主な目標は、日常生活動作(ADL)の獲得を通じて自立度を高め、家庭や社会への復帰を目指すことです。

 

この時期は、訓練のボリューム・頻度・多様性が最も大きくなります。厚生労働省が定める回復期リハビリテーション病棟では、最大3時間/日のリハビリ訓練が可能で、理学療法・作業療法・言語聴覚療法が連携して計画的に介入します。

 

主な訓練内容は以下の通りです。

 

分野 訓練内容 使用される道具・手法
基本動作訓練 起き上がり・座位保持・立位保持・歩行訓練 平行棒、杖、下肢装具
ADL訓練 トイレ、更衣、食事、整容、入浴などの動作訓練 洋式便座、衣類補助具、環境設定
上肢・手指訓練 握力訓練、物品把持、作業模倣訓練 アクリルコーン、洗濯バサミ、作業台
認知機能リハビリ 記憶、注意、判断力の訓練 カレンダー訓練、言語刺激、記憶ゲーム
食事・嚥下訓練 飲み込み・咀嚼の安全性向上 嚥下体操、とろみ調整、ポジショニング

 

この時期の特徴は「段階付けによる訓練設計」が中心となることです。つまり、現在できること、次にできるようになるべきことを明確にし、それに合ったタスクプラクティスやCI療法などを活用して段階的に機能を向上させます。

 

維持期・生活期で必要な支援内容

 

維持期・生活期は、リハビリの集中的な訓練が一段落し、家庭や地域社会での生活に焦点が移る時期です。このフェーズでは、機能の改善よりも「維持」と「活用」、そして「生活の質の向上」が主眼となります。退院後の在宅生活を想定し、再発予防や介助の軽減、自立支援が重要なテーマになります。

 

維持期においては訓練の場が病院から訪問リハ、デイケア、地域リハビリテーションセンターなどに移行します。以下に、生活期に実施される主な支援内容をまとめます。

 

支援領域 目的 内容
身体機能の維持 筋力・柔軟性・可動域の低下予防 自主トレーニング、ウォーキング指導、体操プログラム
ADLの維持・拡張 自立度の保持と生活負担の軽減 トイレ、整容、料理、買い物などの生活課題の反復訓練
環境調整 転倒・事故予防、作業効率の向上 段差の解消、手すりの設置、道具の配置見直し
社会参加支援 孤立予防、精神的満足度の向上 通所サービス、趣味活動、家族交流の促進
家族支援 介助の質向上、負担の軽減 介助方法の指導、介護保険サービスの活用提案

 

この段階では「活動」と「参加」の観点が重要です。ICFでいえば、単に「身体機能」だけでなく、日常生活動作(ADL)や役割行動(IADL)、さらには地域交流まで含めた支援が求められます。

段階付けを成功させるリハビリ技法:Task PracticeとCI療法

Task Practiceとは何か

 

Task Practiceとは、リハビリテーションにおける課題反復型訓練の一つであり、特定の動作や機能を何度も繰り返すことで、脳や神経回路に再学習を促し、機能回復を図る手法です。反復練習により神経可塑性が活性化され、損傷を受けた脳部位の代償回路を形成しやすくなる点が科学的に証明されています。

 

Task Practiceは以下のようなプロセスで実施されます。

 

  1. 現在可能な動作レベルを詳細に評価(例:握る・持ち上げる・運ぶなど)
  2. 目的動作を細分化し、段階的に設定
  3. 同一動作を高頻度で繰り返す(1セット20〜30回を1日複数回)
  4. 随時フィードバックと修正(鏡、動画、療法士の指導など)
  5. 動作が安定したら次のレベルの課題へ進行

 

このような訓練は、脳卒中後の上肢麻痺、運動失調、手指の巧緻性低下に対して特に有効とされ、国内外のリハビリ施設で広く採用されています。

 

Task Practiceの主な特徴とメリット

 

項目 内容
対象動作 日常動作(食事、更衣、整容、洗濯など)の一部または全体
対象者のレベル 中等度〜軽度麻痺、認知機能が保たれている方
回数と頻度 1日200〜600回程度の反復が望ましい(疲労度に応じて調整)
利用される道具 アクリルコーン、マグカップ、洗濯バサミ、積み木、作業ボードなど
成果の評価方法 FIMスコア、握力計測、関節可動域、運動速度など

 

また、Task Practiceの最大の強みは「現実の動作」をベースにしていることです。たとえば「湯のみを持って口元へ運ぶ」「洋服をハンガーに掛ける」といった具体的な行為を反復するため、実生活での再現性が高く、訓練の成果が日常に活かされやすいという特徴があります。

 

課題指向型アプローチの実践例

 

課題指向型アプローチ(Task Oriented Approach)は、実際の生活行動を模した課題を通じて身体機能と日常生活動作(ADL)の向上を同時に図る実践的なリハビリ手法です。このアプローチは「目的のある動作」が脳や身体の運動学習にとって最も効果的であるという神経リハビリの原則に基づいており、近年のリハビリテーション分野で高い評価を受けています。

 

この手法では、単なる筋力訓練や関節可動域拡大ではなく、患者の生活に直結する「行為」にフォーカスします。たとえば「洗濯物を干す」「箸で食事をとる」「財布を開けて支払う」といった日常のタスクを、そのまま訓練内容として再現します。

 

課題指向型アプローチの実践例

 

課題例 必要な動作要素 使用道具・環境
洗濯物を干す 肩の挙上、肘の伸展、手指の把持、バランス維持 洗濯ばさみ、物干しスタンド、タオル
箸で食事をとる 指の巧緻動作、前腕回外、視覚と協調性 食器、箸、訓練用模擬食品
洋服を畳む 手掌の運動制御、両手協調動作、体幹安定性 タオル、シャツ、ベッドまたは机面
財布から硬貨を出す 手指の把持・開放、視覚認知、注意力 財布、模擬コイン、机上
ドアノブをひねる 手首の回外・回内、握力、力の制御 訓練用ノブ、壁面固定台

 

これらの課題は、評価を基に患者のレベルに応じて段階付けされ、タスクの難易度を変化させながら進めます。たとえば、洗濯物干しの訓練も「ピンチ型の洗濯ばさみ→バネが強いばさみ」「椅子に座ったまま→立位保持での実施」など、段階的に応用が可能です。

 

成功する課題指向型リハビリには、患者本人のニーズと生活背景を的確に理解し、それをタスクに反映させるセンスが求められます。汎用的な課題ではなく「その人らしい生活」の再構築に貢献するリハビリこそが、課題指向型アプローチの本質といえます。

まとめ

リハビリの段階付けは、ただ順番に訓練を進めるという単純な話ではありません。個々の患者の状態や生活環境、ADL(日常生活動作)の目標に応じて、段階ごとに最適な訓練方法や支援内容を設計する必要があります。特にTask PracticeやCI療法、プレシェーピングなどのアプローチは、機能回復のスピードと質を大きく左右する重要な技法です。

 

実際に、厚生労働省や作業療法士会の報告でも、段階的な訓練計画を組んでいる現場では利用者の自立度や運動機能が顕著に向上しているというデータがあります。段階づけが適切に行われていれば、患者本人も「できることが増えてきた」と感じやすく、リハビリへのモチベーションが保たれるのです。

 

一方で、段階設計を間違えると、逆に訓練が苦痛になり、離脱や機能低下の原因にもなりかねません。「動作に進展がない」「訓練が本人に合っていない」と感じる時は、段階の見直しが必要です。段階付けは単なる進行表ではなく、評価と調整を繰り返す動的なプロセスだということを意識する必要があります。

 

この記事で紹介した手法や考え方は、作業療法士だけでなく、自宅介護に関わるご家族や介護支援専門員にとっても有効です。段階的なアプローチを正しく理解し、日々の訓練に活かすことで、利用者のQOL(生活の質)は確実に向上します。数あるリハビリ法の中から、科学的根拠に基づいた段階付けを選択すること。それが今、求められている支援の本質です。

 

片麻痺のリハビリをサポートするパワーアシストシリーズ - 株式会社エルエーピー

株式会社エルエーピーは、脳梗塞や事故などによる片麻痺の後遺症を持つ方々の自宅でのリハビリをサポートするため、パワーアシストシリーズを開発・提供しております。このシリーズは、空気圧を利用して麻痺した手指や足首、手首の関節をやさしく動かし、リハビリ訓練を補助するロボットです。自宅で簡単に使用でき、継続的なリハビリを可能にします。製品ラインナップには、手指用の「パワーアシストハンド」、足首用の「パワーアシストレッグ」、手首用の「パワーアシストリスト」があり、各部位のリハビリに対応しています。これらのリハビリ補助ロボットを通じて、皆様の機能回復と生活の質の向上に貢献いたします。

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よくある質問

Q. リハビリの段階付けは実際にどれくらいの期間で効果が出るものですか?
A. 効果が現れる期間は対象者の疾患やADLの状態によりますが、急性期から生活期までの標準的なリハビリテーションプロセスは(3か月〜6か月)が目安です。Task Practiceを日常生活に応用した訓練では、約(2週間)で動作の精度向上が見られた事例もあり、段階的に正しい訓練を組むことで機能や自立度の向上を早めることができます。

 

Q. 段階付けを誤るとどんな影響がありますか?具体的な例はありますか?
A. 不適切な段階付けは、患者にとっては(過負荷による筋力低下や関節拘縮の進行)、精神的な挫折感を引き起こすリスクがあります。例えばADLの評価を誤って、身体能力よりも高度な訓練を先に設定した場合、利用者が自助動作に失敗し、訓練に対して否定的な反応を示すことがあります。その結果、訓練の継続が困難となり、結果的に生活機能の低下や介助量の増加へとつながることも報告されています。段階づけの正確な評価と、作業療法士の経験に基づく判断が不可欠です。

会社概要

会社名・・・株式会社エルエーピー
所在地・・・〒243-0212 神奈川県厚木市及川2-1-40
電話番号・・・046-204-9343

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